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07年10月18日(木)

アートdeArtU(1)いのちと平和、未来へつなぐ―いわさきちひろ展e001_artde)アート de Art

 優しいメッセージが、こんなにも伝わるものでしょうか。美術館「えき」KYOTOの「いわさきちひろ展」は初期のデッサンから旅先のスケッチ、絵本原画や油彩など約100点の作品が、ちひろの世界と生き方を語ります。

 「小さい子どもがきゅっとさわるでしょ、…あんなぽちゃぽちゃの手からあの強さが出てくるんですから。そういう動きは、ただ観察してスケッチだけしていても描けない。ターッと走ってきてパタッと飛びついてくるでしょ、あの感じなんてすてきです」。好奇心や喜び、寂しさ、不安、掴もうとする指先。…ほんの一瞬の表情を捕らえたデッサンから、子どもたちへの愛情が溢れ出します。

 生後10ヶ月と1歳の赤ちゃんを描き分けることができたというちひろが、好んで使ったのがパステルです。子どもの頭をなでる母親の指がそのまま画用紙の上に線を引いたよう。じいっと見ていると、子どもの肌や髪の柔らかい感触が手の平によみがえるようです。

 子どもとともに「平和」を生涯のテーマにしたちひろ。被爆した子どもの作文や詩に絵を描いた『わたしがちいさかったときに』の原画も展示されています。

  青春時代に戦争を体験した彼女を変えたのは、疎開先で偶然見つけた「日本共産党演説会」のポスターだったそうです。

 「戦争が終わって、はじめてなぜ戦争がおきるのかということが学べました。そして、その戦争に反対して牢に入れられた人たち…殺された人のいることも知りました。大きい感動をうけました。そして、その方々の人間にたいする深い愛と、真理を求める心が、命をかけてまでこの戦争に反対させたのだと思いました」と語ったちひろは、1946年日本共産党に入党。そして亡くなる最後まで、ベトナムの戦火の下にいる子どもたちを気にかけたといいます。

 いのちへの深い愛情、人間と未来への優しいまなざし。そこに普遍的なものが流れているからこそ、没後33年を経て、こんなに多くのことが伝わるのでしょう。

PS.連載再開です。“アート”を通していろんなことを伝えていきます。

*いわさきちひろ展 〜11/11まで美術館「えき」KYOTO

 

『京都民報』10/21付「成宮まり子のアートdeArt」

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