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08年3月11日(火)

アートdeArtU(5)理想の居場所をつくる―建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズe001_artde)アート de Art

 滋賀県立近代美術館で開催中の「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」に触発され、建築家ヴォーリズの足跡を滋賀・京都にたどってみました。

 ヴォーリズといえば、豊郷小学校の“取り壊し騒動”をきっかけにその名を知った方も多いのではないでしょうか。その小学校の階段手すりには「ウサギとカメ」のブロンズ像がちょこんと鎮座しています。子どもたちに小学校をプレゼントした地元出身の事業家が「カメのように誰も見ていなくても努力し、ゆっくりでいいから前に行きなさい」と、昔々、先生から教えられたというエピソードにちなんだものだそうです。“騒動”とは対照的に、なんともかわいらしい話です。

 そういえば、ヴォーリズの建築はどれもみな、人を包み込むような優しさやシンプルな中にもあたたかさが溢れています。「使う人をいちばん大切に」とした彼の思いが見てとれるようです。

 1905年に英語教師として来日したヴォーリズは熱心なキリスト教者でもあり、そのために2年で解職されてしまいます。その後、建築の仕事を始めて、全国に教会や学校、住宅、店舗ビルなど1000を超える建築設計を行なっています。

 彼が拠点にした近江八幡市の歴史的な町並みに建つ旧八幡郵便局を訪ねました(写真上)。玄関や窓のアーチ型が印象的で、現在はヴォーリズ建築保存再生運動「一粒の会」の事務所が置かれているとのこと。

 旧水口図書館(写真左:滋賀県甲賀市)は、いまも小学校の敷地に建つ地域のシンボル的存在です。塔屋上のランタンと呼ばれるつくりがいかにも粋で目を惹きます(国登録有形文化財)。

 京都でも、東華菜館(旧矢尾政)は「海の幸山の幸」の食材をモチーフにした玄関など、四条大橋におなじみの風景。他、京都大学YMCA会館(左京区)、御幸町教会(中京区)、大丸ヴィラ・旧下村邸(上京区)など、ヴォーリズ建築はあちこちにあり、いまも活躍中です。

 特定の様式にこだわるよりも、合理性や日本の風土・暮らしとの調和をめざし、“理想の居場所”づくりを追求しつづけたヴォーリズ。だからこそ時代を超えて親しまれるのでしょう。…今年は彼が建築の仕事を始めてからちょうど100年にあたるそうです。

「信・望・愛―理想の居場所をつくる ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」滋賀県立近代美術館 3月30日(日)まで

 ★『京都民報』3/16付「成宮まり子のアートdeArt」

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